はかい
破戒

冒頭文

この書の世に出づるにいたりたるは、函館にある秦慶治氏、及び信濃にある神津猛氏のたまものなり。労作終るの日にあたりて、このものがたりを二人の恩人のまへにさゝぐ。   第壱章       (一) 蓮華寺(れんげじ)では下宿を兼ねた。瀬川丑松(うしまつ)が急に転宿(やどがへ)を思ひ立つて、借りることにした部屋といふのは、其蔵裏(くり)つゞきにある二階の角のところ。寺は信州下水内郡(しもみの

文字遣い

新字旧仮名

初出

「破戒」緑蔭叢書第壱編、島崎春樹(自費出版)、1906(明治39)年3月25日

底本

  • 現代日本文學大系13 島崎藤村集(一)
  • 筑摩書房
  • 1968(昭和43)年10月1日