ろうじゅうのめがね
老中の眼鏡

冒頭文

一 ゆらりとひと揺(ゆ)れ大きく灯(ほ)ざしが揺れたかと見るまに、突然パッと灯(あか)りが消えた。奇怪な消え方である。 「……?」 対馬守(つしまのかみ)は、咄嗟(とっさ)にキッとなって居住いを直すと、書院のうちの隅(すみ)から隅へ眼を放ち乍(なが)ら、静かに闇(やみ)の中の気配を窺(うかが)った。 ——オランダ公使から贈られた短銃(たんづつ)も、愛用の助広(すけひろ)

文字遣い

新字新仮名

初出

「改題」1930(昭和5)年

底本

  • 小笠原壱岐守
  • 講談社大衆文学館文庫、講談社
  • 1997(平成9)年2月20日