しらみ

冒頭文

一 元治(げんぢ)元年十一月二十六日、京都守護の任に当つてゐた、加州家の同勢は、折からの長州征伐に加はる為、国家老(くにがらう)の長大隅守(おほすみのかみ)を大将にして、大阪の安治川口(あぢかはぐち)から、船を出した。 小頭(こがしら)は、佃久太夫(つくだきうだいふ)、山岸三十郎の二人で、佃組の船には白幟(しろのぼり)、山岸組の船には赤幟が立つてゐる。五百石積の金毘羅(こんぴら)船

文字遣い

新字旧仮名

初出

「希望」1916(大正5)年5月

底本

  • 現代日本文学大系 43 芥川龍之介集
  • 筑摩書房
  • 1968(昭和43)年8月25日