はたもとたいくつおとこ 09 だいきゅうわ えどにかえったたいくつおとこ
旗本退屈男 09 第九話 江戸に帰った退屈男

冒頭文

一 ——その第九話です。 とうとう江戸へ帰りました。絲の切れた凧(たこ)のような男のことであるから、一旦退屈の虫が萌(きざ)して来たら最後、気のむくまま足のむくまま、風のまにまに、途方もないところへ飛んで行くだろうと思われたのに、さても強きは美しきものの愛、肉親の情です。予期せぬ事からはしなくも呼び寄せて、はしなくも半年ぶりに出会った愛妹(あいまい)菊路(きくじ)と、そうして菊

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 旗本退屈男
  • 春陽文庫、春陽堂書店
  • 1982(昭和57)年7月20日新装第1刷