ひんをしるす
貧を記す

冒頭文

月曜付録に文を投ぜんの約あり。期に至りて文を得ず、しかれども約は果たさざるべからず。すなわちわが日記をくり返して材を求む。材なし。やむことをえずしてここにわが貧を記す。もとより日記の文をそのままに摘録せるなり。我と共に貧なる者は世に貧同人のあることを知れ。富貴なる者は単にわがごとき貧者のこの世に存在することを知れ。    新居 三月二六日、有楽町の家を借りてそうじしつ。

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆85 貧
  • 作品社
  • 1989(平成元)年11月25日