こうじょうさいぼう
工場細胞

冒頭文

上  一 金網の張ってある窓枠(まどわく)に両手がかゝって——その指先きに力が入ったと思うと、男の顔が窓に浮かんできた。 昼になる少し前だった。「H・S製罐(せいかん)工場」では、五ラインの錻刀切断機(スリッター)、胴付機(ボデイ・マシン)、縁曲機(フレンジャー)、罐巻締機(キャンコ・シーマー)、漏気試験機(エアー・テスター)がコンクリートで固めた床を震わしながら、耳をろうす

文字遣い

新字新仮名

初出

「改造」改造社、1930(昭和5)年4、5、6月号

底本

  • 工場細胞
  • 新日本文庫、新日本出版
  • 1978(昭和53)年2月25日