きこうぶんかのむれ たやまかたいし |
紀行文家の群れ ――田山花袋氏―― |
冒頭文
明治文壇には、紀行文家と称せられる一群の顔ぶれがあった。根岸派では、饗庭篁村が先達で、八文字舎風の軽妙洒脱な紀行文を書き『東京朝日』の続きものとして明日を楽しませた。幸田露伴にも『枕頭山水』の名作があり、キビキビした筆致で、自然でも、人間でも、片っぱしからきめつけるような犀利(さいり)な文章を書いている。しかしこのご両人は、あまりに老大家であって、「一群」からは、かけ離れていた。一群の人たちは、遅
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- アルピニストの手記
- 平凡社ライブラリー、平凡社
- 1996(平成8)年12月15日