メデューサのくび
メデューサの首

冒頭文

T医科大学の四年級の夏休みに、わたしは卒業試験のため友人の町田(まちだ)と二人で伊豆山(いずさん)のS旅館に出かけました。六月末のことで避暑客もまだそんなに沢山はいませんでしたから、勉強するには至極適当であったけれども、勉強とは名ばかりで、わたしたちは大いに遊んでしまいました。 あるいは東洋一と称せられる千人風呂(ぶろ)を二人で独占して泳いだり、あるいは三大湯滝に打たれたり、あるいは軽便

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 大雷雨夜の殺人 他8編
  • 春陽文庫、春陽堂書店
  • 1995(平成7)年2月25日