しせい
死生

冒頭文

一 私は死刑に処せらるべく、今東京監獄の一室に拘禁せられて居る。 嗚呼死刑! 世に在る人々に取っては、是れ程忌わしく恐ろしい言葉はあるまい、いくら新聞では見、物の本では読んで居ても、まさかに自分が此忌わしい言葉と、眼前直接の交渉を生じようと予想した者は一個もあるまい、而も私は真実に此死刑に処せられんとして居るのである。 平生私を愛してくれた人々、私に親しくしてくれた人々は、斯くあ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆8 死
  • 作品社
  • 1983(昭和58)年3月25日