一切の味(あぢはひ)は水を藉(か)らざれば其の味を発する能はず。人若し口の渇くこと甚しくして舌の燥(かわ)くこと急なれば、熊の掌(たなそこ)も魚の腴(あぶらみ)も、それ何かあらん。味は唾液の之を解き之を親ましむるによつて人の感ずるところとなるのみ。唾液にして存せざれば、五味もまた無用のものたらん。唾液は水なり、ムチンの存在によつて粘(ねば)きも、其実は弱アルカリ性の水にして、酵素のプチアリンを含め