かんがだん
観画談

冒頭文

ずっと前の事であるが、或(ある)人から気味合(きみあい)の妙(みょう)な談(はなし)を聞いたことがある。そしてその話を今だに忘れていないが、人名や地名は今は既に林間(りんかん)の焚火(たきび)の煙のように、何処(どこ)か知らぬところに逸(いっ)し去っている。 話をしてくれた人の友達に某甲(なにがし)という男があった。その男は極めて普通人型(がた)の出来の好い方(ほう)で、晩学ではあったが

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 幻談・観画談 他三篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1990(平成2)年11月16日