はせくらじけん
支倉事件

冒頭文

呪の手紙 硝子(ガラス)戸越しにホカ〳〵する日光を受けた縁側へ、夥(おびたゞ)しい書類をぶち撒(ま)けたように敷散らして其中で、庄司利喜太郎氏は舌打をしながらセカ〳〵と何か探していた。彼は物事に拘泥しない性質(たち)で、十数年の警察生活の後現在の新聞社長の椅子につくまで、いろ〳〵の出来事を手帳に書き留めたり、書類の整理をしたりした事は殆(ほとん)どなかった。今日急に必要が出来て或る書類を探し

文字遣い

新字新仮名

初出

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

底本

  • 日本探偵小説全集1 黒岩涙香・小酒井不木・甲賀三郎集
  • 創元推理文庫、東京創元社
  • 1984(昭和59)年12月21日