パルチザン・ウォルコフ
パルチザン・ウォルコフ

冒頭文

一 牛乳色(ちちいろ)の靄(もや)が山の麓(ふもと)へ流れ集りだした。 小屋から出た鵝(がちょう)が、があがあ鳴きながら、河ふちへ這って行く。牛の群は吼(ほ)えずに、荒々しく丘の道を下った。汚れたプラトオクに頭をくるんだ女が鞭を振り上げてあとからそれを追って行く。ユフカ村は、今、ようよう晨(あした)の眠りからさめたばかりだった。 森の樹枝を騒がして、せわしい馬蹄の音がひび

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 現代日本文學大系 56 葉山嘉樹・黒島傳治・平林たい子集
  • 筑摩書房
  • 1971(昭和46)年7月15日