ひかりのなかに |
光の中に |
冒頭文
一 私の語ろうとする山田春雄は実に不思議な子供であった。彼は他の子供たちの仲間にはいろうとはしないで、いつもその傍を臆病そうにうろつき廻っていた。始終いじめられているが、自分でも陰では女の子や小さな子供たちを邪魔してみる。又誰かが転んだりすれば待ち構えたようにやんやと騒ぎ立てた。彼は愛しようともしないし又愛されることもなかった。見るから薄髪の方で耳が大きく、目が心持ち白味がかって少々気味
文字遣い
新字新仮名
初出
「文芸首都」1939(昭和14)年10月号
底本
- 光の中に 金史良作品集
- 講談社文芸文庫、講談社
- 1999(平成11)年4月10日