おだわらのじん
小田原陣

冒頭文

関東の北条 天正十五年七月、九州遠征から帰って来た秀吉にとって、日本国中その勢いの及ばないのは唯関東の北条氏あるだけだ。尤も奥羽地方にも其の経略の手は延びないけれど、北条氏の向背が一度決すれば、他は問題ではない。箱根山を千成瓢箪(びょうたん)の馬印が越せば、総(すべ)て解決されるのである。 聚楽第(じゅらくだい)行幸で、天下の群雄を膝下(しっか)に叩頭(こうとう)させて気をよくして

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本合戦譚
  • 文春文庫、文芸春秋
  • 1987(昭和62)年2月10日