おうにんのらん
応仁の乱

冒頭文

天下大乱の兆 応仁の大乱は応仁元年より、文明九年まで続いた十一年間の事変である。戦争としては、何等目を驚かすものがあるわけでない。勇壮な場面や、華々しい情景には乏しい。活躍する人物にも英雄豪傑はいない。それが十一年もだらだらと続いた、緩慢な戦乱である。 併しだらだらでも十一年続いたから、その影響は大きい。京都に起った此の争乱がやがて、地方に波及拡大し、日本国中が一つの軟体動物の蠕動

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本合戦譚
  • 文春文庫、文芸春秋
  • 1987(昭和62)年2月10日