えきとてそう
易と手相

冒頭文

自分が、易や手相のことを書くと笑う人がいるかも知れないが、自分が一生に一度見て貰った手相は、実によく適中した。 それは、時事新報社の記者をしている頃だった、久米が二十七歳前のことだから、十年近い昔である。久米と芥川と僕とで、晩食を共にした後でもあったろうか、湯島天神の境内を通るとき、彼処に出ている一人の易者に冗談半分に見て貰ったのである。むろん諸君も想像する通り、芥川だけは見て貰わなかっ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆82 占
  • 作品社
  • 1989(平成元)年8月25日