しまばらしんじゅう
島原心中

冒頭文

自分は、その頃、新聞小説の筋を考えていた。それは、一人の貧乏華族が、ある成金の怨みを買って、いろいろな手段で、物質的に圧迫される。華族は、その圧迫を切り抜けようとして踠(あが)く。が、踠(あが)いたため、かえって成金の作っておいた罠(わな)に陥って、法律上の罪人になるという筋だった。 自分は、その華族が、切羽詰って法律上の罪を犯すというところを、なるべく本当らしく、実際ありそうな場合にし

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 菊池寛 短篇と戯曲
  • 文藝春秋
  • 1988(昭和63)年3月25日