きょうぞうのちち
恭三の父

冒頭文

手紙 恭三は夕飯後例の如く村を一周して帰って来た。 帰省してから一カ月余になった。昼はもとより夜も暑いのと蚊が多いのとで、予(かね)て計画して居た勉強などは少しも出来ない。話相手になる友達は一人もなし毎日毎日単調無味な生活に苦しんで居た。仕事といえば昼寝と日に一度海に入るのと、夫々(それ〳〵)[#ルビの「それ〳〵」はママ]故郷へ帰って居る友達へ手紙を書くのと、こうして夕飯後に村を一

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本文學全集 70 名作集(二)大正篇
  • 新潮社
  • 1964(昭和39)年11月20日