さるとびさすけ
猿飛佐助

冒頭文

火遁巻 千曲川に河童が棲んでいた昔の話である。 この河童の尻が、数え年二百歳か三百歳という未(ま)だうら若い青さに痩せていた頃、嘘八百と出鱈目仙(千)人で狐狸(こり)かためた新手(にいて)村では、信州にかくれもなき怪しげな年中行事が行われ、毎年大晦日の夜、氏神詣りの村人同志が境内の暗闇にまぎれて、互いに悪口を言い争ったという。 誰彼の差別も容赦もあらあらしく、老若男女

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 織田作之助 名作選集4
  • 現代社
  • 1956(昭和31)年5月20日