はるながばなし
春永話

冒頭文

むら〳〵と見えて たなびく顔見世の幟のほどを 過ぎて来にけり 昭和十年三月、私の作る所である。歌は誇るに値せぬが、之に関聯して私ひとり思ひ出の禁じ難いものがある。京の顔見世は、近年十二月行ふことになつてゐる。十一月末にさし迫つて初める為、十二月興行と謂つた形をとることになつてしまつた。此は全く、明治中頃からの新しい為来りに過ぎない。明治の末、大正の初年頃、京の顔見世と言へば、大阪からも見に行

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆 別巻10 芝居
  • 作品社
  • 1991(平成3)年12月25日