かげをふまれたおんな きんだいいようへん
影を踏まれた女 近代異妖編

冒頭文

一 Y君は語る。 先刻も十三夜のお話が出たが、わたしも十三夜に縁のある不思議な話を知つてゐる。それは影を踏まれたといふことである。 影を踏むといふ子供遊びは今は流行(はや)らない。今どきの子供はそんな詰らない遊びをしないのである。月のよい夜ならばいつでも好さゝうなものであるが、これは秋の夜にかぎられてゐるやうであつた。秋の月があざやかに冴(さ)え渡つて、地に敷く夜露が白く

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本幻想文学集成23 岡本綺堂 猿の眼 種村季弘編
  • 国書刊行会
  • 1993(平成5)年9月20日