きどうむかしがたり
綺堂むかし語り

冒頭文

Ⅰ 思い出草 思い出草 赤蜻蛉 私は麹町(こうじまち)元園町(もとぞのちょう)一丁目に約三十年も住んでいる。その間に二、三度転宅したが、それは単に番地の変更にとどまって、とにかくに元園町という土地を離れたことはない。このごろ秋晴れの朝、巷(ちまた)に立って見渡すと、この町も昔とはずいぶん変ったものである。懐旧の感がむらむらと湧く。 江戸(えど)時代に

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 綺堂むかし語り
  • 光文社時代小説文庫、光文社
  • 1995(平成7)年8月20日