みうらろうじんむかしばなし
三浦老人昔話

冒頭文

桐畑の太夫       一 今から二十年あまりの昔である。なんでも正月の七草すぎの日曜日と記憶している。わたしは午後から半七老人の家をたずねた。老人は彼の半七捕物帳の材料を幾たびかわたしに話して聞かせてくれるので、きょうも年始の礼を兼ねてあわ好くば又なにかの昔話を聞き出そうと巧らんで、から風の吹く寒い日を赤坂まで出かけて行ったのであった。 格子をあけると、沓(くつ)ぬぎには新しい

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 大衆文学大系7 岡本綺堂 菊池寛 久米正雄 集
  • 講談社
  • 1971(昭和46)年10月20日