はんしちとりものちょう 66 じぞうはおどる
半七捕物帳 66 地蔵は踊る

冒頭文

一 ある時、半七老人をたずねると、老人は私に訊いた。 「あなたに伺ったら判るだろうと思うのですが、几董(きとう)という俳諧師はどんな人ですね」 時は日清戦争後で、ホトトギス一派その他の新俳句勃興の時代であたから、わたしもいささかその心得はある。几董を訊かれて、わたしはすぐに答えた。彼は蕪村(ぶそん)の高弟で、三代目夜半亭を継いだ知名の俳人であると説明すると、老人はうなずいた。

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 時代推理小説 半七捕物帳(六)
  • 光文社時代小説文庫、光文社
  • 1986(昭和61)年12月20日