はんしちとりものちょう 04 ゆやのにかい
半七捕物帳 04 湯屋の二階

冒頭文

一 ある年の正月に私はまた老人をたずねた。 「おめでとうございます」 「おめでとうございます。当年も相変りませず……」 半七老人に行儀正しく新年の寿を述べられて、書生流のわたしは少し面食らった。そのうちに御祝儀の屠蘇(とそ)が出た。多く飲まない老人と、まるで下戸(げこ)の私とは、忽ち春めいた顔になってしまって、話はだんだんはずんで来た。 「いつものお話で何か春らしい種

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 時代推理小説 半七捕物帳(一)
  • 光文社文庫、光文社
  • 1985(昭和60)年11月20日