はんしちとりものちょう 68 ににんにょうぼう
半七捕物帳 68 二人女房

冒頭文

一 四月なかばの土曜日の宵である。 「どうです。あしたのお天気は……」と、半七老人は訊(き)いた。「ちっと曇っているようです」と、わたしは答えた。「花どきはどうも困ります」と、老人は眉をよせた。「それでもあなた方はお花見にお出かけでしょう」「降りさえしなければ出かけようかと思っています」「どちらへ……」「小金井です」「はあ、小金井……。汽車はずいぶん込むそうですね」「殊にあしたは日曜ですから、

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 時代推理小説 半七捕物帳(六)
  • 光文社時代小説文庫、光文社
  • 1986(昭和61)年12月20日