しんちゃ
新茶

冒頭文

それほど茶好きでなくとも、新茶には心ひかれる。 あの年寄りじみた、きつい苦みがないし、晴々しい匂ひがするし、茶といふよりも、若葉の雫を啜るといふ感じである。 色がいゝ。白磁の茶椀[#「椀」にママの注記]の半を満してゆらめく青湖の水。  さなりき、誘ふニンフも 誘はるゝ男妖精も共に髪ぞ青かりし 揺曳とした湯気の隙間から、茶椀の岸にさういふ美麗が見えるやうな気がする。 その茶椀を掌に享け

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆24 茶
  • 作品社
  • 1984(昭和59)年10月25日