しょくま
食魔

冒頭文

菊萵苣(きくぢさ)と和名はついているが、原名のアンディーヴと呼ぶ方が食通の間には通りがよいようである。その蔬菜(そさい)が姉娘のお千代の手で水洗いされ笊(ざる)で水を切って部屋のまん中の台俎板(だいまないた)の上に置かれた。 素人の家にしては道具万端整っている料理部屋である。ただ少し手狭なようだ。 若い料理教師の鼈四郎(べつしろう)は椅子(いす)に踏み反り返り煙草(たばこ)の手

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 昭和文学全集 第5巻
  • 小学館
  • 1986(昭和61)年12月1日