菊萵苣(きくぢさ)と和名はついているが、原名のアンディーヴと呼ぶ方が食通の間には通りがよいようである。その蔬菜(そさい)が姉娘のお千代の手で水洗いされ笊(ざる)で水を切って部屋のまん中の台俎板(だいまないた)の上に置かれた。 素人の家にしては道具万端整っている料理部屋である。ただ少し手狭なようだ。 若い料理教師の鼈四郎(べつしろう)は椅子(いす)に踏み反り返り煙草(たばこ)の手