らしょうもん
羅生門

冒頭文

或日(あるひ)の暮方の事である。一人の下人が、羅生門(らしやうもん)の下で雨やみを待つてゐた。 廣い門の下には、この男の外(ほか)に誰もゐない。唯、所々丹塗(にぬり)の剥げた、大きな圓柱(まるばしら)に、蟋蟀(きり〴〵す)が一匹とまつてゐる。羅生門(らしやうもん)が、朱雀大路(すじやくおおぢ)にある以上(いじやう)は、この男の外にも、雨(あめ)やみをする市女笠(いちめがさ)や揉烏帽子が、

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「帝国文学」1915(大正4)年11月

底本

  • 新選 名著復刻全集 近代文学館 芥川龍之介著 羅生門 阿蘭陀書房版
  • ほるぷ出版
  • 1976(昭和51)年4月1日