じじょでん
自叙伝

冒頭文

自叙伝(一)   一 赤旗事件でやられて、東京監獄から千葉監獄へ連れて行かれた、二日目か三日目かの朝だった。はじめての運動に、一緒に行った仲間の人々が、中庭へ引き出された。半星形に立ちならんだ建物と建物との間の、かなり広いあき地に石炭殻を一面にしきつめた、草一本生えていない殺風景な庭だ。 受持の看守部長が名簿をひろげて、一列にならんでいるみんなの顔とその名簿とを、しばらくの間見く

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 大杉栄全集 第十二巻
  • 現代思潮社
  • 1964(昭和39)年12月25日