さんのじりょこうかい
三の字旅行会

冒頭文

一 赤帽の伝さんは、もうしばらく前から、その奇妙な婦人の旅客達のことに、気づきはじめていた。 伝さんは、東京駅の赤帽であった。東海道線のプラット・ホームを職場にして、毎日、汽車に乗ったり降りたりするお客を相手に、商売をつづけている伝さんのことであるから、いずれはそのことに気がついたとしても不思議はないのであるが、しかし、気がついてはいても伝さんは、まだそのことについて余り深く考えた

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」1939(昭和14)年1月号

底本

  • 日本探偵小説全集12 名作集2
  • 創元推理文庫、東京創元社
  • 1989(平成元)年2月3日