あやつりさいばん
あやつり裁判

冒頭文

いったい裁判所なんてとこは、いってみりゃア世の中の裏ッ側みたいなとこでしてね……いろんな罪人(ざいにん)ばっかり、落ちあつまる……そんなとこで、二十年も廷丁(こづかい)なんぞ勤めていりゃア、さだめし面白い話ばかり、見聞きしてるだろうとお思いでしょうが、ところが、二十年も勤めてると云うのが、こいつが却ってよくないんでしてね、そりゃアむろん面白い事件がなかったわけじゃア決してないんですが……なンて云い

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」博文館、1936(昭和11)年9月号

底本

  • とむらい機関車
  • 国書刊行会
  • 1992(平成4)年5月25日