さんきょうじん
三狂人

冒頭文

一 赤沢(あかざわ)医師の経営する私立脳病院は、M市の郊外に近い小高い赭土山(あかつちやま)の上にこんもりした雑木林を背景に、火葬場へ行く道路を見下すようにして立っているのだが、それはもうかなり旧式の平屋建で立っていると云うよりは、なにか大きな蜘蛛でも這いつくばったという形だった。 全く、悪いことは続けて起るとはうまいことを云ったもので、今度のような世にも兇悪無惨な惨事がもちあがる

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」博文館、1936(昭和11)年7月号

底本

  • とむらい機関車
  • 国書刊行会
  • 1992(平成4)年5月25日