きちがいきかんしゃ
気狂い機関車

冒頭文

一 日本犯罪研究会発会式の席上で、数日前に偶然にも懇意になったM警察署の内木(うちき)司法主任から、不思議な殺人事件の急電を受けて冷い旅舎に真夜中過ぎの夢を破られた青山喬介と私は、クレバネットのレイン・コートに身を包んで烈しい風を真面(まとも)に受けながら、線路伝いに殺人現場のW停車場へ向って速足に歩き続けていた。 沍(いて)て泣き喚く様な吹雪の夜の事だ。 雪はやんでいた

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」博文館、1934(昭和9)年1月号

底本

  • とむらい機関車
  • 国書刊行会
  • 1992(平成4)年5月25日