とうだいき
灯台鬼

冒頭文

一 わたし達の勤めている臨海試験所のちょうど真向いに見える汐巻(しおまき)灯台の灯が、なんの音沙汰(おとさた)もなく突然吹き消すように消えてしまったのは、空気のドンヨリとねばった、北太平洋名物の紗幕(ヴェール)のようなガスの深いある真夜中のことであった。 水産試験所と灯台とでは管轄上では畑違いだが、仕事の上でおなじように海という共通点を持っているし、人里はなれたこの辺鄙(へんぴ)な

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 新青年傑作選 爬虫館事件
  • 角川ホラー文庫、角川書店
  • 1998(平成10)年8月10日