ゴールデン・バットじけん
ゴールデン・バット事件

冒頭文

1 あの夜更(よふけ)、どうしてあの寂しい裏街を歩いていたのかと訊(き)かれると、私はすこし顔が赭(あか)くなるのだ。 兎(と)に角(かく)、あれは省線の駅の近所まで出て、円タクを拾うつもりで歩いていたのだった。連(つ)れが一人あった。帆村荘六(ほむらそうろく)なる男である。——例の素人(しろうと)探偵の帆村氏だった。 「君の好きらしい少女は、いつの間にやら居なくなったじゃな

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」1933(昭和8)年10月号

底本

  • 海野十三全集 第2巻 俘囚
  • 三一書房
  • 1991(平成3)年2月28日