はちゅうかんじけん
爬虫館事件

冒頭文

1 前夜の調べ物の疲れで、もう少し寝ていたいところを起された私立探偵局の帆村荘六(ほむらそうろく)だった。 「お越し下すったのは、どんな方かね」 「ご婦人です」助手の須永(すなが)が朗(ほが)らかさを強(し)いて隠すような調子で答えた。「しかも年齢(とし)の頃は二十歳(はたち)ぐらいの方です」 (なにが、しかもだ)と帆村はパジャマの釦(ボタン)を一つ一つ外(はず)しながら思った。こ

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」1932(昭和7)年10月号

底本

  • 海野十三全集 第2巻 俘囚
  • 三一書房
  • 1991(平成3)年2月28日