くうしゅうそうそうきょく
空襲葬送曲

冒頭文

父の誕生日に瓦斯(ガス)マスクの贈物 「やあ、くたびれた、くたびれた」家中(いえじゅう)に響(ひび)きわたるような大声をあげて、大旦那の長造(ちょうぞう)が帰って来た。 「おかえりなさいまし」お内儀(かみ)のお妻(つま)は、夫の手から、印鑑(いんかん)や書付(かきつけ)の入った小さい折鞄(おりかばん)をうけとると、仏壇(ぶつだん)の前へ載せ、それから着換(きが)えの羽織を衣桁(いこう)から取っ

文字遣い

新字新仮名

初出

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

底本

  • 海野十三全集 第1巻 遺言状放送
  • 三一書房
  • 1990(平成2)年10月15日