かいだん
階段

冒頭文

1 出来ることなら、綺麗に抹殺してしまいたい僕の人生だ。それを決行させては呉(く)れない「彼奴(きゃつ)」を呪(のろ)う。「彼奴」は何処(どこ)から飛んできて僕にたかったものなんだか、又はもともと僕の身体のうちに隠れていたものが、或る拍子に殻(から)を破ってあらわれ出でたものなんだか判然しないのであるが、兎(と)も角(かく)も「彼奴」にひきずられ、その淫猥(いや)らしい興奮を乗せて、命の続く

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」博文館、1930(昭和5)年10月号

底本

  • 海野十三全集 第1巻 遺言状放送
  • 三一書房
  • 1990(平成2)年10月15日