にんげんかい
人間灰

冒頭文

1 赤沢博士の経営する空気工場は海抜一千三百メートルの高原にある右足湖畔(うそくこはん)に建っていた。この空気工場では、三年ほどの間に雇人(やといにん)がつぎつぎに六人も、奇怪なる失踪(しっそう)をした。そして今に至るも、誰一人として帰って来なかった。 ずいぶん永いことになるので、多分もう誰も生きていないだろうと云われているが、ここに一つの不思議な噂があった。それは彼の雇人が失踪す

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」博文館、1934(昭和9)年12月

底本

  • 海野十三全集 第3巻 深夜の市長
  • 三一書房
  • 1988(昭和63)年6月30日