しんどうま
振動魔

冒頭文

1 僕はこれから先(ま)ず、友人柿丘秋郎(かきおかあきろう)が企てた世にも奇怪きわまる実験について述べようと思う。 柿丘秋郎と云ったのでは、読者は一向興味を覚えないだろうと思うが、これは無論、僕が仮りにつけた変名であって、もしもその本名を此処に真正直(ましょうじき)に書きたてるならば、それが余りにも有名な人物なので、読者は吁(あ)ッと驚いてしまうだろう。それにも拘(かかわ)らず、敢

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」博文館、1931(昭和6)年11月号

底本

  • 海野十三全集 第1巻 遺言状放送
  • 三一書房
  • 1990(平成2)年10月15日