マージャンさつじんじけん
麻雀殺人事件

冒頭文

1 それは、目下(もっか)売出(うりだ)しの青年探偵、帆村荘六(ほむらそうろく)にとって、諦(あきら)めようとしても、どうにも諦められない彼一生の大醜態(だいしゅうたい)だった。 帆村探偵ともあろうものが、ヒョイと立って手を伸ばせば届くような間近(まじ)かに、何時間も坐っていた殺人犯人をノメノメと逮捕し損(そこな)ったのだった。いや、それどころではない、帆村探偵は、直ぐ鼻の先で演じ

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」博文館、1931(昭和6)年5月号

底本

  • 海野十三全集 第1巻 遺言状放送
  • 三一書房
  • 1990(平成2)年10月15日