たんでき
耽溺

冒頭文

一 僕は一夏を国府津(こうづ)の海岸に送ることになった。友人の紹介で、ある寺の一室を借りるつもりであったのだが、たずねて行って見ると、いろいろ取り込みのことがあって、この夏は客の世話が出来ないと言うので、またその住持(じゅうじ)の紹介を得て、素人(しろうと)の家に置いてもらうことになった。少し込み入った脚本を書きたいので、やかましい宿屋などを避けたのである。隣りが料理屋で芸者も一人かかえてあ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
  • 中央公論社
  • 1970(昭和45)年5月5日