ほうめいごぶさく 01 はってん
泡鳴五部作 01 発展

冒頭文

一 麻布の我善坊にある田村と云ふ下宿屋で、二十年來物堅いので近所の信用を得てゐた主人が近頃病死して、その息子義雄の代になつた。 義雄は繼母の爲めに眞(まこと)の父とも折合が惡いので、元から別に一家を構へてゐた。且、實行刹那主義の哲理を主張して段々文學界に名を知られて來たのであるから、面倒臭い下宿屋などの主人になるのはいやであつた。 が、渠が嫌つてゐたのは、父の家ばかりではない。自分の妻子

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「大阪新報」1911(明治44)年12月16日~1912(明治45)年3月25日

底本

  • 泡鳴五部作 上巻
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1955(昭和30)年7月25日