きょねん
去年

冒頭文

一 君は僕を誤解している。たしかに君は僕の大部分を解していてくれない。こんどのお手紙も、その友情は身にしみてありがたく拝読した。君が僕に対する切実な友情を露ほども疑わないにもかかわらず、君が僕を解しておらぬのは事実だ。こういうからとて、僕は君に対しまたこんどのお手紙に対し、けっして不平などあっていうのではないのだ。君をわかりの悪い人と思うていうのでもないのだ。 僕は考えた。

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 野菊の墓他六篇
  • 新学社文庫、新学社
  • 1968(昭和43)年6月15日