となりのよめ
隣の嫁

冒頭文

一 「満蔵(まんぞう)満蔵、省作(しょうさく)省作、そとはまっぴかりだよ。さあさあ起きるだ起きるだ。向こうや隣でや、もう一仕事したころだわ。こん天気のえいのん朝寝していてどうするだい。省作省作、さあさあ」 表座敷の雨戸をがらがらあけながら、例のむずかしやの姉がどなるのである。省作は眠そうな目をむしゃくしゃさせながら、ひょこと頭を上げたがまたぐたり枕へつけてしまった。目はさめていると姉に思わ

文字遣い

新字新仮名

初出

「ホトトギス」1908(明治41)年2月号

底本

  • 野菊の墓
  • 集英社文庫、集英社
  • 1977(昭和52)年9月20日