ひとつのせかい ――ししん――
一つの世界 ――私信――

冒頭文

君の手紙と東京から帰った会社の人の報告で東京の惨状はほぼ想像がつく。要するに「空襲恐るるに足らず」といった粗大な指導方針が事をここに至らしめたのだろう。敵が頭の上に来たら日本の場合防空はあり得ない、防空とは敵を洋上に迎え撃つこと以外にはないとぼくは以前から信じていたがまちがっていなかった。しかるにいまだ空襲の被害を過少評価しようとする傾向があるのは嘆かわしいことだ。この認識が是正せられないかぎり日

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 現代日本思想大系 14 芸術の思想
  • 筑摩書房
  • 1964(昭和39)年8月15日