もとより何故(なにゆえ)という理(わけ)はないので、墓石の倒れたのを引摺寄(ひきずりよ)せて、二ツばかり重ねて台にした。 その上に乗って、雨戸(あまど)の引合(ひきあわ)せの上の方を、ガタガタ動かして見たが、開(あ)きそうにもない。雨戸の中(うち)は、相州西鎌倉乱橋(みだればし)の妙長寺(みょうちょうじ)という、法華(ほっけ)宗の寺の、本堂に隣(とな)った八畳の、横に長い置床(おきどこ)