にんぎょのほこら
人魚の祠

冒頭文

一 「いまの、あの婦人(ふじん)が抱(だ)いて居(ゐ)た嬰兒(あかんぼ)ですが、鯉(こひ)か、鼈(すつぽん)ででも有(あ)りさうでならないんですがね。」 「…………」 私(わたし)は、默(だま)つて工學士(こうがくし)の其(そ)の顏(かほ)を視(み)た。 「まさかとは思(おも)ひますが。」 赤坂(あかさか)の見附(みつけ)に近(ちか)い、唯(と)ある珈琲店(コオヒイてん)の端

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 鏡花全集 巻十六
  • 岩波書店
  • 1942(昭和17)年4月20日